「マイ・ハート・ビロングス・トゥー・ダディー」は、1938年にコール・ポーターが作詞・作曲したミュージカル・ナンバーで、ブロードウェイ作品『リーヴ・イット・トゥ・ミー!』のために書かれた。この曲でメアリー・マーティンが一躍スターダムに躍り出たことでも知られる。
キーはCマイナーで、マイナー・キーの持つ気だるいムードとポーターらしい洒脱な歌詞が絶妙に組み合わさっている。形式は変則的なAABAで、Aセクションのメロディはマイナー・スケール上を軽やかに動き、「ダディー」への忠誠を歌いながらも二重の意味を含んだウィットが光る。ブリッジではメジャー方向に転じ、対照的な明るさを見せる。ミディアム・テンポのスウィングやバラードで演奏されることが多く、ヴォーカリストに特に人気の高い一曲だ。
メアリー・マーティンの1938年のオリジナル・キャスト録音が伝説的である。1960年の映画『恋をしましょう』ではマリリン・モンローがこの曲を歌い、映画史に残るパフォーマンスとなった。ジャズの世界ではアニタ・オデイやエラ・フィッツジェラルドのヴォーカル解釈のほか、チャーリー・パーカーのインストゥルメンタル版も知られている。